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リチウム・イオン・バッテリーの話

 最近はリチウム・イオン・バッテリーについて正しい情報が出回ってきていますが、いまだに誤解も多い様なのでまた書こうと思います。

ただし、私も専門家ではないのでもし間違っている様であればご指摘いただけるとありがたいです。

まず最初に、よく聞く名称としてリチウム・イオン・バッテリーといわゆるLiPo・バッテリーがありますが、これは同じものなのでしょうか? それとも違うもの?

先日仕事でLiPoバッテリーはリチウムイオンと違って不安定だからと言う話がありました。

で、それに疑問を持って調べたところ以下の様な情報が見つかりました。

■ リチウムイオンバッテリーの特徴 

リチウム・イオンは電解質に有機物の電解液を採用しています。
・揮発性が高く可燃性である
・液漏れのおそれがある
といった不安要素に加えて
・不純物の混入
・制御回路の不良
などの要素が複合原因となって加熱・発火・爆発事故になるケースが昨今大きな問題となっています。
また、液状なので希望の形状にするには限界があります。


■ リチウムポリマーバッテリーの特徴 

一方リチウム・ポリマーは電解質に高分子ポリマー材料を採用しています。
その特徴は
・燃えにくく安定性の高い物質である
・短絡(ショート)しても化学変化を起こしてガスが発生し、セルを包装するアルミシールが膨らむだけ
 密封したアルミシールが切れるとガスが外に出て元の形に戻る
 そのとき内部のセルはほぼ元の機能を果たさなくなっている

・希望の形状にしやすい(例:円筒状、シート状など)
・シート状にすれば電解面積や放熱面積を広くすることができ、熱の上昇を多少緩和できる
・放電が高速である
・有害物質がリチウム・イオンより大幅に少ない


出展:https://www.diatec.co.jp/support/details/lithium.html


その他のサイトなどを見ていても大同小異でしかないので取り扱い上の注意はほぼ同じと見て良いでしょう。

で、こんな指摘もありました。

リポバッテリーは、リチウムイオンポリマーバッテリーのことで、「リポ」、「LiPo」、「Li‐Po」「LPB」、「リチウムポリマー」または「ポリマー電池」と呼ばれることもあります。ゲル状のポリマー(高分子)電解液を採用したリチウムイオン電池です。


しかし、実際にポリマー電解液を使用しているものは少なく、ドローン用にリポバッテリーとして販売されているほとんどの電池が、液体電解液を使用しているリチウムイオン電池です。

★なぜ液体電解液を使用しているのに「リポバッテリー」と呼ばれているか?
1999年、ソニーが電解液をゲル状ポリマー電解質に置き換えることで、液漏れ防止のために
外装容器に金属缶を使う必要がなく、アルミラミネートパックを使用する薄型・軽量を実現した“リチウムイオン・ポリマー二次電池”を商品化し、携帯電話広く使われていました。
ドローンにも外見上ラミネート形のリチウムイオン電池を使用されることから、通称「リポバッテリー」と呼ばれるようになったと考えます。


出展:https://corp.furukawadenchi.co.jp/ja/products/lithium/chishiki/01.html

その他のサイトなどを見ても、実質的にリチウムイオンもリポもほぼ同等の性能と安全性で、さらには外見上ラミネートのものはリポと呼ばれていることが多い程度の話になっていますね。

どこのサイトも私の様な素人ではなくプロの会社が責任を持って情報発信をしているサイトですから、信頼性は高いと断言しても良さそうです。

で、取り敢えず本物のリポバッテリーもラミネート型のリチウムイオンバッテリーも若干の特性の違いはあるものの、安全性に対する取り扱いから充放電特性などを含めてほぼ同じ考え方で良いとの結論を得ました。

で、昔から話題になっている充電の仕方の話に移ろうと思います。

私のブログでも過去に何回か話をさせていただいております。

2015/01/31 iPhone の取説? その6 充電のやりかた

2017/02/28 携帯電話(スマートフォンを含む)のバッテリーの扱い方に対する誤解

2017/11/14 スマホの充電


最近は iPhone でも充電の設定で80%までしか充電しないという選択肢があったりします。

で、これって本当にバッテリーの長寿命化に貢献するのでしょうか?

もしそうであればデフォルトがこの80%までしか充電出来ない様にしておく方が好ましいのでは?

という事で気になったのが YouTubeのとある投稿。アップル製品のいろいろな情報を発信して下さっている方です。その方がこの80%充電を実行して試験結果を公開してくださっています。

リンクの許可を頂いていないのでここにURLを載せるのは控えますが、なかなかしっかりした検証です。

ただここで気になるのは、本人も同意して下さっていますが、今までは100%から使い始めて大体20%から10%まで使っていたのを、80%から同じように大体20%から10%まで使っての比較ということですので、1日の使用量としてはスタートの20%分減っていると言う事です。

結果として半年後のバッテリー性能で以前と比較して30%程充電回数が少なかったと言う事です。なので当然バッテリーの劣化も30%程減っている、つまり劣化が抑えられたという結果です。

ここで私が感心したのは、アップルの劣化の指標がかなり正確だということ。1日の使用量が減った分、ちゃんと充電回数のカウントも減っています。で、本人も早めに残量が残り少なくなるので特に意識しなくても自然と節約して使う様になったとおっしゃっていました。

なので、これはこれで非常に有用な情報なのですが、残念ながら80%までしか充電しない方が100%まで充電するよりもバッテリーの劣化が少ないかの検証ではないということです。

これを検証するのであれば、100%から40%まで使った時と、80%から20%まで使った時の2年後位の状態を比較しなくてはいけません。

残念ながら私が探した範囲ではそのようなデータは見つかりませんでした。

私が探した限り、十分に信用できる話として過充電は良く無いと言う事と、0%まで使い切るのは良くない。出来れば20%以下にはしない方が良いという話だけです。

そして、メモリー効果はないので継ぎ足し充電は問題ないが、高温下や低温での充電はバッテリー寿命に悪影響を与えるという話だけです。

メーカーや専門家の話としてそれ以上のことは言われていません。

使用しながらの充電が悪いという話もありません。

人工衛星のバッテリーの話でも書きましたが、人工衛星の場合は充電中は常にほぼフルパワーで動いています。夜間の充電できない時は使う一方ですが、昼間は観測しながらの充電です。

でも良くよく考えてみてください。電源から充電用の電流と、各機器が消費する電流の合計をの電流を貰って、機器が消費した残りの電流がバッテリーの充電に使われるだけの話で、バッテリーが充電しながら同時に放電するという事はありえないですよね?
電流はAからBに流れるか、BからAに流れるか、流れないかの3種類しかあり得ません。
確かに高速でA→BとB→Aが切り替わるなら、実質充電と放電が同時進行しているように見えますが、そんなバカなことはしません。
バッテリー側から見たら、充電されているか、放電されているか、あるいは切り離されているかの3択です。

で、スマホの場合は電源が切られた状態であれば別ですが、充電されていない時は常時放電(電気を使用)している状態です。
で、以前(2015/01/31)のブログにも書いていますが、当時のiPhoneでは電源マークに雷マークとプラグマークがあり、雷マークでは充電中、プラグマークは電源に繋がってはいるものの、放電中のマークで、大体97%と100%の間を行ったり来たりしていて、100%なのにさらに充電(過充電)する事は無い設計でした。現在はそのような区別がないのはなぜでしょうかね?

他の機器の場合でも、100%になれば、電源に繋がっていても充電を中止するのが当たり前。
過充電をするような設計の充電機は(中華製を含めて)無いと思った方が良いです。
と言うのはそのまま放置すれば爆発したり燃えたりするのが当たり前だから。
専門家の情報でも満充電されたら充電を停止するとはっきり書かれています。

と言う事で、充電を80%にすればバッテリーが長持ちすると言う話は少なくとも実用レベルにおいてはほぼ無意味と言って良いと思います。
しかし同時に自然に利用頻度が下がると言う意味では非常に有効であることは確かです。

ただ、模型のバッテリーの場合、予め充電しておいて使うのは数日後、と言う場合だけは話が別。まぁ翌日ぐらいなら誤差範囲でしょうが、保存時に満充電状態は良くないとはどこのサイトでも書かれていますね。
保存時は60%程度を目安に時々充電するのが良いとのことです。
ここだけは注意しましょう。




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